ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来




そして、手術して3日目の朝。

1時間毎に行う自主トレーニング、そして祐希との入院生活のコツをようやくつかみ始めた私は起床してすぐにベット上で自主トレーニングに取り組んだ後、照頭台に手を伸ばした。


その理由はそこに貼り付けられていた黄色い付箋を手にとるため。


私は早速、それを手に取った。


やっぱり、見覚えのある達筆な文字。

私の予測的中!


その付箋は

相変わらず忙しい状態が続いているナオフミさんが
またまた夜中こっそりと病室に現れ、眠っている私に声をかけることなく、私宛のメッセージを記してくれたモノ

・・・いわゆる彼の足跡。



今回の足跡の内容。

それは・・・・





“リハビリ、お疲れ。もうすぐ退院?ウチに帰ったら何、食べたい?”






言葉数が少ない彼らしい足跡。

世話を焼くのがスキな彼らしい足跡。

忙しいにも関わらず、いつもの彼らしい・・・足跡。



いつもの私なら

そのメッセージによってシアワセを噛み締めながら、彼の問いかけに対する答えをワクワクしながら考えるのに
この時の私はそんな余裕なんかなかった。



たった一瞬だったけれど

森村医師の言動に対して自分の心が大きく揺れてしまい、いつもの自分らしさを失っていた私は

いつもらしいメッセージを書き残してくれた彼に
向き合える自信がなかった。



同じ敷地内にいるのに、彼になかなか会えないコトを
残念に思ったり、寂しいと思ったりする余裕もその時の自分にはなかった。




『はあぁ、祐希、起きて!朝ごはん前にちょっとお散歩行こう!』



だから私はナオフミさんからのアンケートメッセージに回答することのないまま、

大きな溜息をひとつついた後、なんとか気分転換を図ろうと祐希と散歩に出かけることにした。



『点滴も終わったことだし、売店、行こっか?・・・今日の祐希とママのおやつ買いに!・・・・今日のおやつは何にしようっかな♪』

「マー?」



なんとか元気を出していこうとテンションを上げて祐希に声をかけた私に対して、彼はというと寝起きだったせいもあってか、ボンヤリとした表情で私のほうに返事をしていた。



そして祐希と一緒にエレベーターに乗って1階にある売店に向かった私。

まだ早朝であったこともあり、いつもは人の行き来が多い売店でも人がまばらで、散歩中に目が覚めてきたらしい祐希はお菓子売り場へスムーズに辿り着いていた。





< 221 / 542 >

この作品をシェア

pagetop