ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Reina's eye ケース18:本気の××を携えた2つの影
【Reina's eye ケース18:本気の××を携えた2つの影】
福本さんらしき人からの緊急コールによって
表情を曇らせながらこの病室を後にしたナオフミさん。
彼のその後が気になりながらも、
彼のために何もしてあげられない立場の私は
『祐希はまだ昼寝してるし、さっき、看護師さんに渡せなかったバインダー、届けに行こうかな。』
自分が今、真っ先にすべきである
“自主トレーニング実施表が挟んであるバインダーを看護師さんに届ける” ためにナースステーションに向かった。
午後3時すぎの整形外科病棟。
看護師さんと談笑しながらキャスター付きのベッドで手術室へ連れていかれる年配女性。
分厚い包帯でグルグル巻きになった手を高く挙げながらも談話室でしゃがんで楽しそうに携帯電話で話し込んでいる茶髪の若い女性。
廊下の手すりに掴まりながら懸命に歩行練習に励んでいる初老ぐらいの男性。
看護師さんに怒られながらも車椅子駆動レースを続ける少年達。
病院といえども、怪我を治すためのこの病棟内は活気にあふれている。
病棟のほぼ中央部分にはソファーやTVが置かれているデイルームという面会者と共に過ごせるようなスペースがあり、ナースステーションに向かう時には必ずここを通らなくてはならない。
ナースステーションに向かっていた私も例外なくそのデイルームに差し掛かろうとしていた。
『なんか賑やかだなあ・・・』
デイルームから聞こえてきたざわめきに対してそう呟いた私は何も深く考えないまま、そちらのほうへ近付いた。
「おい、あれ、見てよ!」
「なんだ、なんだ、あっちか?」
光沢のある黒色のジャージ姿で松葉杖をついたまま立っている青年と膝に頑丈そうな装具を着けて車椅子に座っている若干白髪混じりおじさんが窓の外のほうを指差しながらやや興奮気味に話していた。
「あれだよ!!!柵のこっち側にいるんじゃねーか?」
「こっち側だ!!!あの女医さん、ヤバくね?誰か止めにいかねーと!!!!看護師さんに呼んでくるか?」
「ああ、そうしたほうがいいかも」