ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
でも、私は動けなかった。
彼を追いかけられなかった。
もしかしたら
1つの命が失われてしまうかもしれないこの状況で
以前、自分も同じように
彼の手に救われた一人として
彼の行く手を阻むような邪魔をすることは
決してできなかった。
だって私は
彼女の姿に過去の自分を重ねてしまったから
頑張れば全て自分の思い通りになっていた自分が
彼氏に三股をかけられていたというたった1つの出来事
それによって
自分が理想としていた未来へのレールを踏み外したように思い
なにもかもを諦めて
ただただ楽になろうという一心で、自ら命を絶とうとしてしまった
そんな自分の過去を今の彼女に重ねてしまっていた私は
彼女と彼のやりとりを離れた場所から見守ることしかできなかった。
「このままじゃ、私、本当に、助かるはずの患者さんの命を救えない・・・怖いんです。患者さんと向き合うのが・・・・・・だから、キャッ」
美咲さんらしき女医さんが再び感情的にそう叫んだ瞬間、突風が吹きつけ、彼女は大きく後方へ体をよろつかせた。
『ああっ・・・・・』
私は思わず声をあげ、そして反射的に目を閉じてしまった。
彼女が転落しちゃうと思ったその瞬間に。
そして同時に私は
デジャビュに襲われた。
美咲さんらしき女性を助けようとしたナオフミさんが
その場に倒れ込むというデジャビュを。
かつて福本さんから聞いた実際に、私の父親に起こった出来事と同じような、デジャビュを。
怖くて、目が開けられない
美咲さんはもちろん
ナオフミさんがこの屋上から飛び降りようとした妊婦さんを助けようとした時に倒れ込んでそのまま息を引き取ったお父さんみたいに
彼がここで私の目の前で死んじゃったら
私・・どうしたらいいの・・・?
神様は私の大切な人ばかりを連れて行こうとするの?
それは
自ら命を絶とうとした
命を粗末にしようとした私への・・・罰ですか?
でもお願い
今度こそ、もうやめてください
お願いですから・・
「お前を、死なせたりはしない。」