ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来

そして私のカラダは身動きが取れなくなっていた。

今まで耳にしたことのないぐらいの柔らかい口調で私にそう語りかけたその人の、
白衣を着ているけれど、ナオフミさんじゃないその人の・・・腕の中で。

そして右の頬から伝わってきたその人の体温と心臓の鼓動。






この人の体温がこんなにも温かいなんて
この人の心臓がこんなにも目まぐるしく拍動してるなんて
以前、彼にぶつかった時は気がつかなかった



ただただ、イヤな人としか思わなかったのに・・・・



それなのに
頬を介して
彼の体温を、心音を直に感じてしまったことで



この人のその言葉を
すっかり真に受けてる?!



このままだと

ナオフミさんと私の心の距離が
どんどん離れていっちゃいそう・・・・



美咲さんを抱きしめたナオフミさんの想いとか事情とかを
本人からまだ何も聞いてないのに




だから、このまま
流されちゃいけない



この人の甘い囁きに

この状況に



・・・・・ワタシ



寄りかかっちゃいけないんだ







『・・・なんで、そんなコト、言う・・んですか?』







私は彼に抱きしめられている格好のまま
なんとか彼の顔を見上げてから強い口調で彼にそう問い詰めた。


彼を責めるためなんかじゃなくて
この状況に流されないように自分を奮い立たせるために。


でも彼はそんな無茶苦茶な私から目を逸らすことは一切なかった。



そして彼は

いつもの彼らしい・・なんとなくトボけた態度も
一切見せることなくおもむろに口を開いた。














「・・・キミが・・・俺はキミがスキだから・・・」








私の目を力強い眼差しでじっと見つめてから

私のカラダを更に強く抱きしめた彼はそう呟いた。




そんな彼の胸に再び顔を埋めさせられた私は
もう俯くことしかできなくて

彼の白衣のお腹あたりにあるポケットに取り付けられていた


森村 優 
Masaru Morimura 


と書かれた名札がゆっくりと揺れるのを暫くの間見つめていた。


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