ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


「副院長。」


抱きしめていた私を離そうとしないどころか
なぜか落ち着いた声で返事をした森村医師。




「その女性は・・・患者さんじゃないのか?」


「ええ。僕が担当している患者さんです。」


驚きを隠せない様子で彼を問いかけた副院長の声を耳にしても、彼は冷静な態度で応対していた。




「どういうこと、、だ?」



明らかに怒りのこもった声色で彼を問い詰めた副院長。

その人が怒るのもわからなくはない。




だって私の左手は包帯でグルグル巻きにされていて
どこから見ても私は患者にしか見えないから。





森村医師・・・
なんでこんな状況でも
私を抱きしめたままでいるの?



しかも私を自分の担当患者って自ら認めておいて
このままでいるの


マズイんじゃない?



しかも相手は副院長で
かなりご立腹な様子で


やっぱりマズイんじゃない?



彼の腕の中で泣き続けたことによって
少々落ち着きを取り戻しつつあった私はその時、自分の心配よりも明らかに医師として危機的状況に立たされているであろう彼の心配をしてしまっていた。

だから私は彼の胸に埋めていた顔を起こし上げ、カラダまでをも彼から離そうとした。




でも・・・








「僕は疚(やま)しいことをしてるなんて全く思っていませんから。」

「・・・・・・・・」




彼は私に絡み付いていた腕を外そうとはしないまま、副院長に向かってそう答えた。
副院長がすっかり閉口してしまうぐらいの毅然とした態度で。



疚しいことをしていないって・・・

主治医が担当患者を抱きしめる

それは世間の常識から言えば
きっと疚しいことに違いないのに・・・



なんでそんなコト、上司の前とかで

言えちゃったりするの?

どうして・・・?







「・・・彼女は確かに患者さんですが・・・僕がずっと想いを寄せていた女性が、偶然、患者さんになっただけですから・・・」






< 265 / 542 >

この作品をシェア

pagetop