ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


白衣の袖に覆われて直に見ることはできないものの、
そのガッチリとした腕に再びカラダを包まれてしまった私は
呼吸するのも忘れそうなぐらい体をこわばらせた。


そんな私と彼しかいない廊下は
不気味なまでに静まり返っていて。


2人の間には微妙な空気が流れ始めていた。


甘くもなく

辛くもない

そんな微妙な空気が。





でも、そんな空気を切り裂いたのは

森村医師だった。










「ヤベッ!・・今度はそんなつもりは、ないというか・・ジャマするつもりはないというか・・・」





さっきまであんなに落ち着き払った態度で
副院長とやりとりをしていた森村医師。


それなのに彼は

今頃になって珍しく慌てた様子を覗かせながら、

私のカラダに絡みついたままになっていた彼の腕を急いで解いてくれた。




そんなつもりはない・・かぁ


やっぱり、森村医師が私のコトをスキだって言ってくれたのは
単なる事故みたいなモノだったんだ





そうだよね?

あのオレ様森村医師が、いつもぶつかってばかりいる彼が
私のコト、スキなんて考えられない




そうだよ・・・

ナオフミさんが美咲さんを抱きしめた現場を見てしまった私に

バッタリと出くわしてしまったばかりに
彼なりに私を励まそうとして出た言葉だよね



だって私の主治医だし

私が元気なくしてリハビリをサボっちゃったりして
手術して貰った指が元通りにならないことなんかになっちゃうと

彼がヤブ医者呼ばわりされるかもしれないから





だから、私を元気づけようと

スキとかなんとか言っちゃった・・?!



そうだよ、そうに違いない・・・・

だから、あんまり心配かけないように
いつも通りの私に戻らなきゃ




じゃないと
私のココロが
さっきみたいに今、目の前にいる彼によってどんどん揺さぶられてしまうから・・・




『急げとか言いながら、こんな状況じゃ急げない・・・』




私はいつもの自分・・・

いつも彼と向き合う時の自分に戻ろうと
わざと悪態をついた。

いつも彼と向き合う時の
ちょっぴり不機嫌めな自分を造りながら。



「俺のせいかよ。」


ついさっきはあんなに慌てた様子だったのに
私の横柄な態度につられたのか
彼も口を思いっきり尖らせながらそう呟いた。





そう・・・これ!

私と彼の間にはこういう空気


ぶつかりあう、辛味のある空気
甘い空気なんてあり得ない




だって甘い空気は

私とナオフミさんの間にしか流れない空気なハズだから





『他に誰がおるよ?』



だから私も更に悪態をついた。
彼に向き合う時のいつもの私、らしく。



「・・・俺しかおらんわな。悪りーな。でもさ、、今度こそ急げって。日が暮れちまうぞ・・・・そんなにノロノロしとったら。
今後、レイカメちゃんって呼んでやるな。カメさんのようにノロいレイナちゃんの略で!どう?そんなの♪」




だから彼も軽い口調で私をからかった。

こういう彼も、いつもの彼で。




『レイカメって・・・放っておいて下さい!!!!!』

「放っておいてよ♪・・かあ~、やっぱ、レイナはそう来なきゃな♪」

『あーーもう行く!』

「行ってらっさーい♪」



私はトボケた口調で私を送り出してくれた彼を軽くひと睨みしてから歩き始めた。

やっぱり彼は本気で私のコトをスキと言ったのではなかったコトを思い知りながら。


ちょっぴりガッカリ
でもちょっぴり、ホッとしながら。
相反する想いが交錯しながら。



だって付き合ってもいないのにスキって告白されたの初めてだったから

恋愛経験が少ない私にとって
スキと言われて嬉しくないとは言えないし

だから・・・ちょっぴりガッカリ







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