ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Reina's eye ケース20:真夜中に彷徨う蝶
【Reina's eye ケース20:真夜中に彷徨う蝶】
「祐希クン、ママ、いたよー♪」
保育士の伊藤先生のところへ祐希を迎えに行かなくてはならなかった私。
それなのに、屋上で見てしまった出来事と医局前で自分が出くわしてしまった出来事によって完全に動揺してしまい、母親という立場にちゃんと戻れていなかった私は医局の近くでひとり立ち尽くしていた。
そんな私の前に祐希を抱っこしながら現れた伊藤先生は、”また明日~”と笑顔で祐希を引き渡して下さった。
祐希と歩く医局前の廊下の窓から見える景色はもう夕焼け空になり始めていた。
3月とはいえどもまだひんやりとする空気に
私は若干肩を震わせながら
不意に夕焼け空の下方へ視線を落とす。
そこには
森村医師が言っていた通り
その窓からは屋上の様子がはっきりと見え
私は胸が締め付けられる想いに駆られた。
ついさっき自分自身に、
そしてナオフミさんに起こった出来事を想起してしまったことによって。
『祐希、今日の夜ゴハンは何かな?もうすぐ退院できそうだから、おうちに帰ったら祐希のダイスキなハンバーグを作ってあげるからね♪』
祐希と一緒に病室に戻った私はさっき私に降りかかったいくつかの出来事をなるべく想い出さないように夕飯を食べ、歯磨きをし、そして一緒に眠りについた。
いつものように。
でもやっぱり眠れなかった。