ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



『ンんんん、はあ・・・だ、誰?』

指で塞がれたままだった唇をなんとか開き、ついそう聴いてしまった。


「ほっとけ・・・って言いたいところだけど、引き下がらんだろうな。」


そう言いながら彼はベッドからゆっくりと上体を起こしてベッドに腰掛けた。
そして、床の上に脱ぎ捨てられていたバスローブに手を伸ばして拾い上げ、ササッとそれを羽織って立ち上がった。

布団の中にいた私は自分がどうしていいのかわからず、ただただ彼の後ろ姿を眺めるだけ。

そんな私の視線を感じたのか、彼は私のほうに振り返り、再びベッドに腰掛けカラダを軽く後ろに反らして、私の耳元に顔を寄せた。


「・・・ゴメン、ちょっと行ってくる。」

『・・・・・・』

「すぐに戻るから、このままココにいて。」


さっきまでの挑発的な口調から一変してちょっぴりあきれ気味な感じの彼。

そして、彼はまたベッドから立ち上がり、聞き覚えのある声が聞こえてきたドアのほうへ歩き始めた。


ついさっきはホテルの従業員さんが困っちゃうからなんて、自分から彼にそう言って、彼をドアの方に向かわせようとしたのに
いざ、彼がそっちへ行こうとしてる姿を見たら
自分から彼にそう勧めようとしたコト
もう後悔してる?

なんでだろう
彼はただ、ドアの向こうの人に応対するためにそっちに向かっただけなのに
なのに、こんなに不安に似た気持ちになるのは
なぜ?


自分の心がグラグラと揺れている私の傍からどんどん離れていった彼はドアの前でピタリと止まった。

「ルームサービス、頼んでませんけど。」

彼はそう言いながらドアに背を向けてもたれ掛かり俯く。
そして右ひざを軽く曲げて右足裏をペタリとドアにくっつけ、そして再び小さく口を開いた。


「とりあえず昨日はどうも。」


昨日はどうもって
お兄ちゃん、お礼言ってる??

昨日って
昨日お礼を言うようなコト?
そういえば、さっき聞き覚えある声だろッって・・・そうも言ってた
それって、もしかして・・・


「ったく、こんな朝からどうしました?・・・入江さん。」


入江さん?!


「俺の携帯、ずっと鳴らしてたのも、入江さんですよね?」

お礼の言葉を口にしているも、明らかに不機嫌な彼。


やっぱり入江さん?!
なんで?!


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