ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
森村医師は主治医として仕事をしに来たって言ってたけれど
でもこんな狭い部屋でふたりきり
しかもここには祐希も、誰もいない
そんな空間で
何も起こらない??
森村医師と私
本当にもう何も起こらない・・・???
「オレはさ、あの生命保険営業マンの男みたいな卑怯な真似はしないから、大丈夫だよ。」
生命保険営業マンの男って
もしかして康大クンのコト?
しかも、卑怯な真似って
どういうコト??
そういえば
森村医師は、昨日、副院長らしき人の前で
私のコト、ずっと想いを寄せていた女性って言ってた
ずっと想いを寄せていたって・・
森村医師は
私のコトを
いつから
何を
どこまで知っている、の?
「やっぱり、なんにも覚えてないって顔してる・・・レイナさんは♪」
『・・・やっぱり覚えてないっ、て・・?』
腕組みをしたまま挑発的な口ぶりで私に語りかけた森村医師。
そう、これもいつもの彼。
そんな彼の態度に、彼の挑発に
ついついのってしまう単純な私。
あんなことがあっても
彼があまりにも自然な態度だから。
「教えて欲しい?」
『・・・・・・・・・・・』
全く想い出せない私は顔を歪めるしか反応できなくて。
「じゃ、中に入って♪」
『それって交換条件!!!!!』
「ハーイ、交換条件♪でも聞いておいたほうがいいんじゃねーの?じゃなきゃ・・・いつまでたっても眠れないんじゃねーの?」
『・・・・ッツ・・・』
悔しいけれど
聞いておいたほうがいい
それも確かなコト
もしかしたら
私が知らないワタシを知っているかもしれないから
ナオフミさんと私がすれ違い気味になっているのは
この人も、森村医師という人物も
少なからず影響しているから
私に後ろめたさという感情を抱かせている人物だから
パタッ、パタッ、パタッ・・
さっきまでスリッパが床にくっついてしまったみたいに動けなかったのに、私はなにかにとりつかれたようにスムーズな足取りで観察室の中に入っていった。
「よしよし、いいこ♪」
『・・・・・・・・』
まるで子供をあしらうかのような森村医師の声かけに
黙ったまま少々不機嫌な態度で軽く彼を睨んだ私。
彼と私の間に流れる空気
それを
甘い雰囲気にしない
・・・それが私なりの予防線。
もし今、ここで彼とまた過ちを起こすようなことになったら
もし今、ここで彼をスキになるようなことになったら
もう二度と
ナオフミさんと向き合うことができなくなる気がしたから。