ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
“ただの言い訳”
“本当のところはアナタのところに帰って欲しくない・・・”
“オレ、完璧・・・不利ですから。”
主治医という立場を利用した上で
感情までもをチラつかせるという
ある意味公私混同な森村医師によるその一言。
しかし、それはあまりにも力強く伝わってきたから
ワタシだけでなく
「・・・・・・・・・・」
ナオフミさんまでもを閉口させる
まさしく正攻法になってしまっていたようで。
そしてナオフミさんは
森村医師の胸倉を掴んでいた両手を放した。
その顔からは完全に表情までもが消えてしまっていて
彼はとうとう森村医師に背を向けた。
「日詠さん、オレ、医師としての行為を逸脱しているマネしてるってわかってます。でもオレ、今度こそ、彼女を・・・高梨さんをどんなことをしても守り抜きたい・・・そう思ってますから・・・」
“高梨さんをどんなことをしても守り抜きたい”
その言葉までも口にした森村医師の態度は
私とナオフミさんを騙そうとした元カレの康大クンとは明らかに異なり、聞いているこちらが息を呑んでしまうぐらい真剣そのものだった。
いつものオレ様口調ではなく
至って丁寧な口調で。
もし、ナオフミさんと出会う前の自分が
この人から同じ言葉を聞かされたら
私、今頃、どうなってたんだろう?
恋することに一所懸命な頃に
・・・・こんな言葉を聞かされたら
・・・・この人とちゃんと向き合っていたならば
私、もしかしたらこの人のコトを
こんなにも悩むことなく
もっとすんなりとスキになっていたのかな・・・
今頃になってナオフミさんという人と幸せなミライに向かって歩み始めたばかりの私に
こんな想いを抱かせるなんて
神様は・・・・イジワルだ
いや、神様のせいにしちゃいけない
こんな想いを抱いてしまっているのは
ワタシの曖昧さ
そして
ワタシの・・・弱さなんだ
「森村さん、ひとつだけ聴かせて欲しい。」