ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
森村医師そして私にも背を向けたままそう語りかけたナオフミさん。
もちろん彼の表情を窺うことはできないままで。
「ええ、どのようなコト、ですか?」
「伶菜を・・・彼女をどんなことをしても守り抜く、そんな自信が君にはあるのか?」
背を向けたままの格好であるナオフミさんの表情はまったく窺えなかったが
小さくややかすれたその声から彼の不安定に揺れ動く感情が浮かび上がったような気がした。
「もちろんです。オレ、今のオレなら、彼女に何でも与えてあげられる。気持ちに余裕を持って育児に専念できるような安定した空間を、共に過ごす多くの時間を、そして・・・自分に愛されているという幸福感、守られているという安心感をも。」
ナオフミさんの背をじっと見つめながら丁寧な口ぶりのままそう語り、全くと言っていいほど淀みをみせない森村医師。
ナオフミさん
もし、私とこの先の未来を、共に歩いてくれようとしているのならば
せめて
“オレのほうが伶菜を守れる”とか“キミには任せられない”とか
そういう強気の言葉を・・・・・今、ココで聞かせて欲しい
あまり感情を口にすることが少ないナオフミさんには、そういう言葉は似合わないかもしれないけれど
そういう言葉
今、ココでアナタの口から
聞きたい・・・・・
でなきゃ私・・・
このまま森村医師のあの言葉の勢いに流されちゃいそうで
だからどうか、お願い
こんな不安定な私を
どうにかして
・・・繋ぎとめて
お願いだから・・・
ガ、、チャッ・・・・
「・・・オレは・・・何ひとつ守りきれない自分が情けなく思うよ。」
パ、タンッ
処置室の出入り口の白いドアは
ややかすれ気味で、さっきよりも更に小さな声でそう呟いたナオフミさんの手によって静かに閉められてしまった。