ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来






『伶、菜・・・・・』

「高梨さん!!!!!こっちに右手を出すんだ!!!!」



伶菜が今、この状況をどう想っているのかが気になり
彼女の名を呟くことしかできない俺。
それとは対照的に彼女の手を導こうとする彼。



「左手じゃなくて右手のほうだ。さあ、早く!!!!」



掴みたくなるのはわからなくはない
あんなにはっきりと、守ると言われたんだ
しかも、実際に今、主治医である彼に守られている



でも、それでも俺と伶菜の間には
これまで短いながらも困難を共に乗り越えてきた過去がある
一緒に苦しんだからこそ得たものも大きかったはずだ

だから、今、
彼のその声に導かれて彼の手を掴まないで欲しい

頼むから・・・




『伶菜、それ・・・』




自分の想いを言葉で伝えることができなかったこともあってか
促された右手を森村医師の目の前に差し出した彼女。

森村医師はその手を掴んでしまうと思っていたのに
彼は彼女の手の上に載せられていた見覚えのあるハーモニカのキーホルダーと
小さく折りたたまれた紙を掴んだ。


彼の白衣の中に消えたキーホルダー。
彼の手の中に残ったのは折りたたまれた紙。

それをゆっくりと開き始める。
コピー用紙ではなく、薄っぺらい紙特有のカサカサと擦れる音が響く。
その際に見えてきたのは
婚姻届という文字と俺が書いた自分の名前。



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