ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来





『森村さん、それをどうするつもりだ?』


第三者、しかも、伶菜に好意を抱いている人間の手に渡ってしまったそれ。
記載してある面を俺のほうに見えるように掲げた彼。
それは俺だけでなく、伶菜の氏名も書かれている、本当に大切なもの
・・・もうすぐ彼女と一緒に出す予定の婚姻届。

返してもらおうと俺はすぐさまそれに手を伸ばそうとした瞬間・・・


カサッ、カサッ・・ピリーーーー!!!!!



「それって・・・・」

『どういうつもりだ!!!!!!』


彼は俺を挑発するような瞳で俺をじっと見つめながら
手に持ったままだった婚姻届をゆっくりと、見せつけるように破ってしまった。

信じられないような声で呟く伶菜と
彼のあり得ない行動に一気に怒りがこみあげた俺の声が重なる。

それでも表情を一切変えない彼が目の前で2つに分かれてしまった婚姻届を掲げながら立っている。


ドンッ!!!!!



伶菜と俺の関係を繋いでいた婚姻届
未提出状態であったけれど、俺達にとっては大切なモノだった

それが2つに分かれてしまったことが
これからの俺達を暗示してしまっているようで
落ち着いてなんていられない

伶菜と俺のこれからが
第三者のこの男の手で導かれているような気がして
彼に敵意を持たずにはいられない


彼の言動がもう許せなくなった俺は
処置室という公の場所であるとか
医師という自分の立場とか
もうそんなことに構うことなく、
目の前にいる男の胸倉を掴み、彼を体ごと壁に押し付けた。





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