ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
口に軽く握った右手を押し当てながらひとつだけ咳払いをした松浦先生。
それは先程彼が言いかけたことをちゃんと私に伝えようと仕切り直してしている故の行為のようにも見えた。
「だからね、もし高梨さんが彼の想いに応えることができなくてもね・・・彼はそれを引きずることなく整形外科医師としての役割をちゃんと果たせるってコト。」
『整形外科医師として・・・ですか?』
「そう、研修医時代の彼は、仕事上でもメンタル状態に左右されやすかったけど、強くなったね。技術的だけでなくメンタル面でも簡単にはブレたりしない整形外科医師として自立した。傍にいるからよくわかるよ・・・きっと、高梨さんが森村先生でない人を選ぼうとも彼は整形外科医師という自分の立場を見失うことはないから・・・」
『・・・・・・』
「だから高梨さんは余計なコトとか考えずにさ、自分の気持ちに正直になったほうがいいよ。」
私達の関係がお見通しである松浦先生からのその一言。
きっと、それは私の置かれている立場をきっちりと踏まえた上で
第三者として私の気持ちをラクにしてくれようとの気遣いによって紡がれたモノだったに違いないけれど
“高梨さんが森村先生でない人を選ぼうとも”
その言葉についココロにひっかかってしまった私。
私が誰かを選ぶ
そんな権利、こんな自分にふさわしいんだろうか・・?
ナオフミさんのコトが好き
でも美咲さんとのやりとりによって彼に対する不信感が募っている
森村医師のコトも気になる
でも自分にはこれからやりたいコトがある
こんなにも不安定な私には
そんな権利
ふさわしくないんじゃないかな?