ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



ふたりの母親がいた彼の口から出てきた“母さん”という言葉。


ふたりの母親


彼を産んだ日詠早紀という女性と
幼少の彼の育てた高梨詩織という女性。


おそらく今、彼が母さんと呼んだ女性は
私の母親でもある高梨詩織という女性のほうだろう


でも、あの母さんの娘だしっていう意味がよくわからない



もしかして

高梨拓志という人の隠されていた過去を彼が知っていたのと同様に

高梨詩織という人の隠されていた過去までも

彼は知っている、の?

ナオフミさんは知っている、の?






「母さんは・・・いやお袋はさ、ウチの病院の小児科病棟のプレイルームを立ち上げた人なんだ。」



ナオフミさんはそう言いながら腕組みをし、真っ青な空を見上げた。
懐かしい過去を想い起こしているかのような横顔を覗かせながら。






『小児科のプレイルーム?』


「ああ。」


『だって母は星崎にある保育園で保育士をしていたはずじゃ・・』




父親がプラネタリウムの研究員ではなく産科医師であったことを知らされた時と同様に

自分の知らない母親の過去を知らされた私はやはり驚きを隠せなかった。


そんな私の頭を優しくポンと撫でたナオフミさん。




「ああ、そこで保育士をしながらボランティアでプレイルームを作り上げたんだ。親父が助けた小さな命が病気と闘いながらも子供らしく成長できるような空間を作ってあげたいという強い想いが彼女の中にはあってな。」



小児科のプレイルーム

そこは今、私がリハビリに出かけている時に祐希を預かって貰っている場所

それだけじゃない

そこは

点滴の針が手首に刺さったままでいる子も
肘をギブスで覆われている子も
車椅子を利用しなくてはいけない子も
その子達みなが笑顔で過ごせる空間


病気や怪我と闘っている彼らが
子供らしく彼ららしくいられる場所

そして

私も病気と闘う彼らを見て
“誰かの役に立ちたい”と改めて感じた場所


そんな大切な空間が

私の母親の手によって作られたなんて










「お前も、そこで、プレイルームで何かを見つけたんだろう?」


『ナオフミさん、なんで、それ』




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