ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来






この男をどうやったら釣り上げることができるかはわかっている

でも、”あの日”から
魂が抜き取られたかのように、覇気が感じられない




てっきり
レイナと仲直りして
俺が破った婚姻届の代わりになる新しい婚姻届を作って
役所にそれを提出しに行って
うらやましくて仕方がない新婚生活を送っているものだと思っていた。


それなのに
外来受診にやってくるレイナの苗字はいつまで経っても高梨のまま

外来診察に来たレイナに、日詠伶菜になったんじゃないのかよ?と軽く問い詰めたら、”なってません”と苦笑いしながら返答された

さすがに彼女に深い事情を聴くことは、
”森村先生なんてキライ!”と言われるのはツライので、
別にキライと言われてもいいこの男に直撃することにした



『日詠さん、こっちこっち!』


「・・・はい。」


『駆け付け一杯は生中で?』


「俺、いつコールされるかわからないんで、ウーロン茶で。」


『大変だね~産科ドクターは。へい、店員さん、ウーロン茶お願い!』



着ていたキャラメル色のダッフルコートをハンガーにきちんとかける
店員から差し出されるおしぼりでは顔は拭かずに手だけを拭く
遅くなってすみませんと俺に頭を下げる
それらの彼の言動は
脱いだ白衣はたたまずにデスクの上にポイ!&おしぼり顔拭きラブ♡な俺とは明らかに異なる毛色、育ちの良さが感じられる

おまけに顔も男の俺から見ても特上
院内の評判も悔しいけれどいい噂しか聞かない

レイナはなんでこいつと進展してないんだ
結婚するつもりだったんじゃないのか?

だから俺は完敗宣言したはずじゃなかったのか?




『ま~、飲みましょうよ~、最近、元気ないし。』


既に生ビール大ジョッキ2杯を空にしていた俺は
酔ったフリをして彼から”あの日”からこれまでのことを聴き出すことにした。



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