ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
俺はあの日、伶菜と離れ離れになってから
伶菜が今日まで何をして過ごしているのかすら知らない
知りたいと思っても
俺自身もその情報を耳にしてしまうと、平常心でいられる自信がないことを自覚している
そういう俺を知っている福本さんも
伶菜に関する情報を持っていても絶対に口を割らない
知りたいとすら思ってはいけない
今日まで俺はそうやって過ごして来た。
『俺は・・・』
「ま~、別れたんだし、日詠先生が知りたくないんだったら、別にあたしは伶菜のことを話さないので・・・ということで子宮がん検診おねが」
『今、どうしているんだ、伶菜は。』
やっぱり伶菜に何かあったんだ
そう思った俺は、居ても立っても居られずに自ら内診室へ向かおうとした真里さんに背中越しにそう訴えた。
「臨床実習に行っているみたいです。」
『臨床実習?』
臨床実習
俺達、医療従事者が資格を得るために避けては通れない厳しいカリキュラムのひとつ
真里さんから、伶菜の近況について自分の身近にもあるキーワードを聞かされたことに
驚かずにはいられない
「病気の・・闘病をしている人達の心の支えになりたいって・・・自分も・・・両親や、ナオフミさんみたいに・・・だそうです。」
『医療関係・・・』
「臨床心理士・・・目指しているそうです。」
振り返ってそう言った真里さんは、今までその情報を黙っていなくてはならない状況から解放されたせいなのか
ほっとした表情で俺に微笑みかけてくれた。