ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
そこから病院までは徒歩。
でも、待たせている人達がいるから悠長に歩いている暇はないと駅からサンダル履きのまま走った。
そのせいか今度は通行人の視線が突き刺さる。
病院内に入ってしまえば白衣姿の自分は周囲に溶け込むことができると言い聞かせ
更に走るスピードを上げた。
『着いた。とりあえず受付で院長室の場所、聴くか。』
息を切らしながら病院内に入る。
病院受付で院長室の場所を聞き、立ち止まることなく、そこへ向かって歩き始める。
さすがに病院内は走るわけにはいかないと逸る気持ちを抑えながら、更に前に進む。
『その角を曲がったら、院長室だな。』
すぐそこに伶菜がいる
3年前、こんな日が来るなんて思っていなかった
俺のもとから姿を消した彼女が医療従事者になるなんて思っていなかったから
1年前、こんな日が来ることを願い始めた
彼女の親友である真里さんに彼女の近況を教えてもらったことで
絶対に諦めない
どうにかしてその手を掴みたい
一人の男として自分ができることはなにか?
同じ医療従事者として自分がすべきことはなにか?
その手を掴むことができたら
もうその手を離さない
そう想い続けて迎えた今日。
初めて見る白衣姿の背の低い伶菜の後ろ姿に
こんなにも胸が熱くなるとは思ってはいなかった。
『・・ったく、いきなり院長室から消えたと思ったらやっぱりココだったんだな・・緊急コール用の携帯ぐらい自分で持ってけって。・・・・整形外科のナースが大騒ぎしてたぞ。』
自分の感情を伝えることが苦手な俺は胸が熱くなっていることをひた隠すために、わざといつもの自分の姿を晒した。