ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Reina's eye ケース28:大きくて温かい手の感触


【Reina's eye ケース28:大きくて温かい手の感触】






あれ?

空耳
ソラミミ?



ここは名古屋城北総合病院の院長室
私は今日からここで従事することになったわけで

今、ここにいるのは
院長先生と奥野先生と・・・
いきなりここで働きたいと乗り込んできた、名古屋南桜総合病院の整形外科医師の森村先生だけのはず


ワタシ、こんな大事な場所にいるのに
ナオフミさんのことばかり考え過ぎて
とうとう空耳まで聞こえるようになっちゃったの?




「やっぱり来た来た♪ 密かにここに来るんじゃないかって・・・アナタのコト、待ってたのよ・・・」



あれ、奥野先生が会話してる


ってことは
空耳じゃ、ない?!







「お久しぶりです、坂田院長。そして、奥野さん・・・・」



・・・・この声




「やだ、その格好で、電車とか乗り継いできちゃったの?相変わらずなのねえ・・・そう思わない?ね、伶菜ちゃ、あっ・・・」







パタッ、パタッ、パタッ・・・・







背後から聞こえてくるサンダルと床が擦れあう音

・・・あの独特なリズム


初出勤という、涙とは全くと言っていいほど縁がなさそうな

・・・こんな日に
・・・こんな時に



なんで涙がでちゃうんだろう
なんで勝手に、涙がでちゃうんだろう

もう泣かないって
あの日、決めたのに





ポ、ン・・・・




『えっ?!』







突然、背後から自分の頭のてっぺんにそっと載せられた手らしきものから伝わる
温かな体温に思わず驚き、両肩を竦めた私。



その瞬間、あの香りが私の鼻をかすめた。
爽やかなグレープフルーツミントの香りが。





「一足、遅れたな・・・ゴメンな・・・伶菜・・・」




こんな日に
こんな時に
こんなにも温かい涙が出るなんて

ワタシ、これっぽっちも考えてなかった・・・・





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