ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


何年ぶりだろう?

こんなにもすぐ傍で
彼の存在を感じていられるのは・・・



あの足音も
あの独特な香りも

そして

この大きな手の温かさも


あの頃となんら変わっていないんだね




もう会うことができないと思っていた人との再会


本来ならば
嬉しくてたまらないハズなのに
その人がダイスキだった彼となると
そういうワケにはいかない

だって私の中では
彼の手を自ら離してしまった後ろめたさが
嬉しいという気持ちを邪魔をしているから




イマ、ワタシハ

ドウシタライイ?



トリアエズ、ワラウ?

ソレトモ

スカサズ、アヤマル?



ドウシタラ

ワタシ ト カレ

マッスグニ・・・ムキアエルノカナ?





彼の声はちゃんと聞こえていたのに
その声が聞こえてくるほうへ顔を向ける勇気を出せなかった私は彼の表情を確認できないままでいたけれど

いますぐ手の届くところに彼がいるということが
彼の大きな手を介して
自分の頭のてっぺんから伝わってきていた私。


彼と再会できたという嬉しさから流れていた温かい涙は
彼の体温がジワジワと伝わってくるに従って
いつの間にかちょっぴり冷たい涙となって頬を伝い落ちた。


今、自分が彼とどう向き合っていいのかわからずに
思うように身動きができないというジレンマによって
涙の温度は変化してしまっていた。





ポンポンッ!




今度は私の頭を軽く触れた直後、離れてしまった彼の手。







パタッ、、パタッ、、、パタッ・・・・





自分から遠ざかるあの足音と引き換えに
ようやく私の視界に入ってきた白衣姿の後ろ姿。


それは間違いなく
私が本当にダイスキだった彼の後ろ姿。

そう
日詠尚史という人の後ろ姿だった。




< 421 / 542 >

この作品をシェア

pagetop