ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
そう。
名古屋南桜総合病院は
今、私達が立っている
私が就職したはずのこの病院ではなく
そこは
私の父親と母親が働いていた場所
そして
ナオフミさんが
日詠尚史という
一時期ではあるが生活を共にしていた人
そして
私にスキという感情を抱かせてくれた人
その人が今もなお、
産科医師として従事している場所でもあるのだから・・・・・
「いや~そういうコトになったんで・・・・申し訳ない。南桜とウチの病院は経営母体が同じで、、施設間異動を行いながら交流を進めているところでね・・・」
辞令が書かれた紙を見つめ、なにがなんだがわからずに身動きがとれないままでいた私の真正面に近付いてきた坂田院長。
彼は院長という立場にあるのにそういう威厳とかがまったく感じられない柔らかい口ぶりで私に今回の辞令の件を説明し始めて下さった。
「散々、南桜の中川院長には、“高梨クンはウチの病院で頑張ってもらいたい”って言い続けていたんだが・・・なんせ、ボクは中川院長にはなにかと頭が上がらなくてね・・・こんなことになってしまって申し訳ない・・・」
『・・・い、いえ・・・』
ナオフミさんと一緒の病院で臨床心理士として従事できるようになるなんて
自分にとって嘘のような現実が今、目の前で繰り広げられていることによってすっかり頭の中が真っ白になってしまった私は
坂田院長に対し、気の利いた返事なんか一切できずに
その一言を口にするのが精一杯だった。
「森村クン、キミも高梨クンがいるからせっかくウチに来てくれる気になっていたのに・・・彼女を紹介してくれた齋藤教授も彼女はかなり優秀な学生だったと言ってたぐらいだから、キミもかなり期待していたんだろう・・・・?でも、こんなコトになってすまないね・・」
「ホントだよ、坂田院長!!!!!オレ、これからどーするよ?」
私とは対照的に完全にご立腹状態の森村医師は
温和そうな坂田院長の性格を見抜いてか
彼に食ってかかっていた。
「えーーー坂田院長。森村クンに謝ることなんかないですよ。カレ、医師としてなんかじゃなく、もっと違う理由で高梨さんと一緒に働くのを期待してたみたいですし♪むしろ院長のご決断、立派です♪」
両腕を組み、顎を軽く引き上げた状態でニヤリとある意味不気味笑みを浮かべてそう言った奥野先生。
「それに、森村クンも、中川院長に戻ってこいって言われたんでしょ?だったら南桜病院に戻れば?」
「えっ?あーーそういうコトもありか。」
奥野先生の声かけによって、
興奮気味だった森村医師は右手で作った拳を自分の左手にポンッと押し当て、ゆっくりと頷きながら納得気味にそう答えた。
「そうそうありジャン♪森村クンがもう少し日詠クンを焦らせないと、アイツはいつまでたっても」
「奥野さん///」
後輩であるのにも関わらず、鋭い目付きで奥野先生に睨みを利かせたナオフミさん。