ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「うわっ、ナオフミくんってば怖い・・・睨まれちゃった・・・」
さすがの奥野先生もナオフミさんの鋭い視線と真っ向勝負をすることができなかったようで、彼女は少々おどけながらそう呟き、すかさず口元に白く長い指を押し当てた。
「はあ・・・俺、睨んでなんかいませんよ・・・っていうか、森村クン、このまま戻ってこなくても」
「日詠サン、そこまで言いますか?レイナのいない間、誰がアナタの面倒みたと思ってるんですか?」
ナオフミさんの呟きがかなり気に入らなかったのか
森村医師は 人差し指をピンッと前に突き出しながら、口を尖らせてナオフミさんに強い口調で問いかけた。
「俺は面倒みて貰った覚えはないな。誰かさんが、フラレた者同士、酒で飲みましょうって誘っといて、がっつり酔っ払って・・介抱した覚えだけはあるけどな。」
それでも全く怯む様子が窺えないナオフミさん。
「うっ・・日詠サン、まだ覚えてたの?そんなコト」
「あれから、さんざん迷惑かけられてたからな・・」
「そんなあ・・・・迷惑だなんて・・」
「ったく、相変わらずなんだな」
「相変わらずまで、言う?」
とうとう大人気なく言い合いを始めてしまったナオフミさんと森村医師。
もちろんそのふたりの間に
私が割って入る隙間なんて皆無な状況で。
でもその会話に耳を傾け、いつのまにか肩の力が抜けていた私は気がついた。
今まで同性では入江さんにしか心を開いていなかったナオフミさんが森村医師にも心を開くようになっていることを。
だってナオフミさんは
心を開いている人には
ちょっぴりイジワルなことを言ったりするから・・・
でもなんだか
複雑な気分・・・・
だって
以前、ナオフミさんと森村医師は
病院内でも取っ組み合いするぐらい
仲がいいとは言えない状態だったワケで・・・
その一因は
私にもあったワケで・・・・
そして初出勤の今日という日に
自分の頭の中が
ナオフミさんと森村医師の存在によって
こんなにも埋め尽くされてしまうなんて
これっぽっちも思っていなかったワケで・・・
はあぁ
どうなるるんだろう
ワタシ・・・・
グイッ!
『えっ?!』