ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
Hiei's eye カルテ31:弱い自分を知る彼女の可能性
【Hiei's eye カルテ31:弱い自分を知る彼女の可能性】
勤務先の最寄駅の駅員通用口。
そこで伶菜を抱きかかえて出口に向かう。
彼女が出してくれた50歩だけというお姫様抱っこ移動許可。
俺のおねだりもあってその歩数を増やしてくれたせいなのか、恥ずかしそうな顔を浮かべながらも、早く降ろして欲しいみたいな動きはしない伶菜。
駅員通用口を出てから運良く通行人がいなかったため彼女を抱きかかえたまま歩いていたが、約束の100歩でようやく腕の中にいた伶菜を解放してあげた。
その後は、俺の横を歩く彼女。
以前、祐希の散歩に付き合う時などこうやって並んで歩いている時、彼女は他愛もない話をしてくれていた。
同じように並んで歩いているはずの今、彼女が何も話さないことが心配になり彼女の顔を覗き込む。
彼女は電車内にいた時よりも明らかに緊張感が増している。
『この角を曲がると会議室。遺伝相談のメンバーが揃ってるはずだ。』
「あっ、は、ハイ。」
院内に入り、ようやく彼女に行先を告げた俺。
声が震えている。
肩提げ鞄の持ち手部分をぎゅっと握り締めている。
緊張感MAX到達は間違いない
『緊張しているのか?』
「ま、まあ・・・あっ、でも、大丈夫・・・です。」
『手強いぞ、ここのスタッフ。』
緊張していることぐらいわかっているのに意地悪な質問をする。
俺の前では、弱音を吐いてもいいのに・・・
まあ、ピンチの時ほど力を発揮する彼女らしい反応であることは間違いないけどな
でも、こんなに緊張でガチガチな状況で新しい環境に飛び込むのはさすがの俺も心配になる