ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
グイッ!
イタッ!!!
手首、痛い・・・
「ったく、簡単に触れないで下さい。」
不機嫌度が更に増しているのが伝わってくるお兄ちゃんの声。
「東名で帰れば問題ないでしょ?だから彼女は返して貰います!」
私の右手首をグッと握り締めたまま、呆れた声でそう言いながら冷たい視線で入江さんを睨み返した彼。
フッ!
今の鼻先で笑う声、まさか入江さん?!
「東名は三ケ日での事故で通行止めだ。だからお前はコレ持って新幹線へ急げ。6時33分発のひかりだからな。あと、15分だ。お前の車は俺が名古屋まで届けるから安心しろ。」
そう言いながら入江さんは彼に新幹線のチケットらしきモノを彼の目の前に差し出す。
眉間に皺を寄せたまま、差し出されたチケットを手に取ったお兄ちゃん。
「・・・伶菜、あと15分で準備できるか?」
えっ?15分?
どうしよう
せめてお化粧ぐらいしたいけど
でも歯を磨いて洗顔して、着替えて
それで精一杯かな
『・・うん、頑張る。』
そう言いながら洗面所のほうへ走り始めようとしたその瞬間・・・
グイッ!
イ、イタッ!
今度は何ですか?
「伶菜さんは急がなくてもいい。キミに名古屋市内で道案内して欲しいから、俺と一緒に車に乗って名古屋まで行って欲しい。」
私の左手首を掴み、私の耳元でそう囁いた入江さん。
えっ?!
私、お兄ちゃんと一緒に帰れないの?
あとちょっとぐらい傍にいたいのに
でも、道がわからない入江さんがウチを探すのは大変だろうし
ここでお兄ちゃんと別れて帰るしかないよ、ね・・・・
また、名古屋に帰って、お兄ちゃんが任務を遂行し終えたら
また私のところへ帰ってきてくれるから
だから
『私、入江さんと名古屋に戻るから・・・お兄ちゃんは先を急いで。私、祐希を迎えに行って家で待ってるね。』
私はもう少し彼と一緒にいたいと思う気持ちを隠すように軽い口調で彼にそう声をかけた。