ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
ガチャ、バタン!
・・・・ガチャ・・・・バタン!!
私達はなにかを振り切ったように勢いよく車のドアを開閉し、夕暮れの駐車場に降り立った。
そして、右腕に祐希を抱え、そして左手で私の右手を引いたナオフミさんはすっかり人の気配が少なくなった目的地の敷地内へ足を踏み入れた。
懐かしい景色。
けれども桜の時期にここへ来るのは初めて。
誰もいない桜並木の間を潜り抜け
建物の中に入った私達。
隣接している建物の中は私もよく知っているけれど、この建物の中に入るのは初めてで。
ようやく視界に入ってきた人影のせいで彼に手を引かれたままだけど、緊張せずにはいられなかった。
そしてすれ違った男の人も緊張した面持ちで会釈をしてくれた。
全然知らない人だったけど私もつい会釈してしまった。
『新人さん、なのかな?』
「そうかもな・・今朝のお前との同じで白衣の白さが眩しかったしな」
ナオフミさんの言葉につい苦笑いを浮かべてしまった。
今、すれ違った男の人と今朝の私の姿が
ダブって見えたのかもしれない。
白衣を着ているんじゃなくて白衣に“着られている”感じで。
「初心忘れべからず・・・だな、俺も」
そう言いながら、彼は私の手をそっと離し、少々色褪せた木目調の茶色いドアをゆっくりとノックした。
「どうぞ。」
ドアの向こう側から聴こえてきた落ち着いた男の人の声。
ガチャ・・・
「・・・久しぶりだな。」
その声は・・・・
ナオフミさんの実の父親の東京の日詠先生。
そう。ここは・・・・
東京の日詠先生が学長を務める東京医科薬科大学の学長室だった。
ナオフミさんをじっと見つめながらほんの少しだけ口角をあげた東京の日詠先生。
「・・・・お久しぶりです。」
そう挨拶したナオフミさん。
その横顔には笑みというものが見当たらなくて。
家族との久しぶりの再会なのに彼からは
温かい空気などは全くといってほど感じられなかった。