ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



そして私達も日詠先生の後をついて歩き始めた。
窓の外はもう真っ暗になっていて。

さっきまでキレイな夕日を眺めることができたのに。
ナオフミさんと早紀さんの再会がどうなるのか気が気でない私の足取りはどんどん重くなっていた。



「あれ、みてみて、ながれぼし!!!!ながれぼしでしょ?」


「ああ、流れ星、キレイだな。」


でも祐希と彼を抱っこしながら私の数歩前を歩いているナオフミさんにはちょっと異なる景色に見えていたようだった。


“灯りを点しながら飛行する旅客機=流れ星”
それは子供ながらの小さくてかわいい世界だけで成り立つ公式。
それがあり得る景色。




「おねがいしなきゃ!」


「早くお願いしないとどっかいっちゃうぞ!」


「えっ、どうしよう。プリンをおなかいっぱいたべたいかな?チョコかな?ドーナッツかな?」


「俺はみかん大福じゃなくて・・メロンパンだな」



祐希の小さくてかわいい世界にナオフミさんも付き合ってくれているようだった。
今日の昼間の二人の再会なんてもう随分前の出来事みたいにごく自然に。



「祐希クンと尚史。仲がいいんだね。」


そんな二人をじっと見つめながら歩いていた私の隣を日詠先生も歩いて下さっていて。
穏やかな口調で私に声をかけて下さった。


『ええ、とても。』


「そうか・・ふたりを見ていると癒されるね。」


私の返事を聞いて安堵の表情を浮かべた日詠先生。


『はい!』


その表情に私は少し救われたような気がした。




さっきのナオフミさんと東京の日詠先生の再会した時の雰囲気ではなにもかも良くない方向にいきそうな予感がしていた。

でもこの人がいれば、ナオフミさんと早紀さんの再会こそはきっと上手くいくような予感もしてきたから。
そして私は祐希とナオフミさんの後ろを日詠先生と一緒に歩いた。



「そこ左に曲がったとこにあるマンションだ。」


大学から10分くらい歩いたところに日詠先生が住んでいるマンションがあった。
日詠先生はマンションのエントランス入り口のオートロックボタンを手馴れた手つきで押した。


「ひろーい♪ひろい!!!!!!」


ナオフミさんの右腕に抱えられた祐希はマンションのエントランスで大騒ぎ。




『こら、祐希!静かに!!!』


「伶菜クン、少しぐらいなら気にしなくていい。すぐにウチの部屋に向えばいいから。」



神様、仏様、東京の日詠先生様。
私、日詠先生が慌てたり怒ったりするとこ見た事ないかも。

そういう穏やかで落ち着いてるところ・・ナオフミさんは日詠先生に似てるような気がする。



「さあ、エレベーターに乗って。ウチは2階。このマンションは10階建てなんだけど、早紀が高いトコロ苦手でね。だから、低層階住まいなんだ。」


日詠先生の“早紀”と言う声にやっぱりドキッとし、ナオフミさんの様子を伺ったけれど、彼の後ろを歩いていた私は彼の表情の変化を見ることができなくて。


エレベーターに乗り込んでからは誰も言葉を発しないままですぐにドアが開いた。


すぐさま日詠先生がエレベーターから降りた。

私はドアの開ボタンを押したままナオフミさん達に自分よりも先に降りてもらうように勧めた。


軽く会釈してエレベータを降りたナオフミさん。

相変わらず祐希はナオフミさんに抱っこされたままで。








ピンポーン!!!!



「僕だけど。」


日詠先生は少し屈んでインターフォンを覗き込んだ。



「・・・おかえりなさい。」



しばらくして開けられた玄関の向こう側から聞こえてきた声。




早紀さんだ・・・・







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