ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「それ・・・もしよかったら食べて。」
食卓で寿司桶を覗き込もうとしたナオフミさんに早紀さんはやや自信なさげに声をかけた。
「作ってみたの・・・鮭があったから・・・」
鮭?
「・・・・茗《みょう》荷《が》も・・・・入れてみたの」
茗《みょう》荷《が》・・?
もしかして 寿司桶の中身って・・・
ナオフミさんの好物の1つでもある鮭と茗《みょう》荷《が》の混ぜ寿司?
ウチの母親の得意料理でもあるお寿司だ
早紀さんも作るんだ・・・これを
ナオフミさん、以前一緒に暮らしていた時にこれを作ったら、顔をほころばせばがら何杯もおかわりしてたな
ビーフコロッケやメロンパンにもひけをとらないぐらいスキなんだと思ったっけ?
ナオフミさんの顔、ほっこりするかな?
彼のそんな顔を早紀さんが見たら
きっと彼女のココロもほっこりする
そうだよね
きっと・・・・
「・・・味噌汁を頂いても、いいですか?」
ナオフミさんは目の前に置いてあった茶碗ではなく、その隣に置いてあった汁椀を早紀さんのほうへ差し出してしまった。
『ナオフミさん、お寿司は?お好きなんじゃ・・・』
「尚史、、鮭と茗《みょう》荷《が》の寿司はな、早紀が休みの日、詩織ちゃんみたいに作れるようにっていつも練習・・・あっ」
鮭と茗《みょう》荷《が》の混ぜ寿司が早紀さんとナオフミさんの関係を取り持ってくれることを期待し過ぎていた私は思わず声を上げてしまった。
そしてキッチンでクリームシチューを作り直していたはずの日詠先生までもおたまを手にしたままダイニングへやってきて、内緒にしていたはずの早紀さんの努力をナオフミさんの前で暴露してしまった。
ナオフミさんを、早紀さんを信じようと誓い合った私達なのに。
そのことに気がついた私と日詠先生はお互いに顔を見合わせ早速口をつぐんだ。
それからしばらく沈黙の時間が流れた食卓の空気を切り裂くように
「寿司はいらない・・」
ナオフミさんの言葉が小さく響いた。