ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「僕も、早紀を信じるから。」
東京の日詠先生はずっと早紀さんの傍にいる
彼は私なんかよりもずっとずっと、早紀さんとナオフミさん・・・あのふたりが再び繋がりあってくれるのを切に願っているに違いない
そう思うとまた私の胸はズキっと痛んだ。
「さ、とりあえず、ごはんでも食べよう。」
日詠先生は再び背後からいつもと変わらない穏やかな声で食事を勧めて下さった。
「早紀はね、キミと出会ってから、休みの日は医学雑誌じゃなくて料理本を開くようになったんだよ。」
『・・・料理本、ですか?』
「ああ、大皿料理特集だったな。料理苦手なクセに、いつか大人数のご飯を作れるようにならないと・・って。」
私のココロが大きく揺れてしまっている時
必ずといっていいほど温かい空気を運んで下さる日詠先生。
祐希を出産して間もない頃、私は何度も彼のその温かい空気に救われてきた。
「カワイイとこあるだろ?早紀にはこのコト内緒だよ。尚史にもね。きっと早紀はそういう努力を尚史に知られたくないだろうから。」
『・・・ハイ♪』
だからこうやって東京の日詠先生と私はあのふたりを見守る同盟を組んだ。
彼らを信じようっていう同盟を。
そして私達は何事もなかったかのように食卓へついた。
そこには
目玉焼き、ポテトサラダ、マーボ豆腐、お漬物の沢庵、蜆の佃煮らしきもの、そして寿司桶らしきものが並べられており
「ごめんなさい、急慮作ったんだけど、どうやらルーの分量を間違えたみたいで・・・・」
病院内では決して見られないであろう少々慌て気味の早紀さんがカレー皿らしきものを両手に載せながらこちらへやってきた。
「クリームシチューなんだけど・・・なんか、ボトボトになっちゃって・・・」
一旦は両手をこちらに差し出した早紀さんだったけれど、すぐさまそれらを後方へ引っ込めてしまった。
「和洋折衷で凄いメニューだね。かしてごらん。牛乳足してきてみるから。」
日詠先生はそう言いながら立ち上がり、一瞬私のほうを見てニヤリと笑みを浮かべてから早紀さんからお皿を受け取ってキッチンのあるほうへと消えていってしまった。
「ウチは男の人のほうが料理が上手で・・・・」
俯きながら椅子に腰掛けて申し訳なさそうに呟いたエプロン姿の早紀さん。
外来診察でお会いする白衣姿で凛とした早紀さんとは別人みたいで。
日詠先生が“カワイイだろ?”とサラリと言ってのけたのが理解できるような気がした。
『ステキですね、私も日詠先生みたいな旦那様憧れます。』
「えっ、まあ・・そうかしら・・・そうだったら嬉しいわ。」
だってそう答えた早紀さんの横顔はちょっぴり嬉しそうにも見えたから。
そんな早紀さんにももっともっと嬉しい顔をして欲しい。
私にとっても早紀さんは大切な人だから・・・