ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



恨んで殴りかかるとかなんて思ってしまった私

バカだ・・・
今が“泣きどころ”だったのかもしれない

私の父親が作った空色のパズルがとパスッと音をたててキレイに組み合わさったような感覚がしてひとつの家族が出来上がった
そんなシアワセな感覚
これでようやく大切な人達がちゃんと繋がった


そう思ったのに・・・・



「尚史、ごめんなさい。私・・・まだ生後4ヶ月だったあなたにひどいことを」


早紀さん・・・・?!



「早紀・・・それは」


「ううん。いいの。本当のことだから。私ね、あなたに、まだたった4ヶ月の乳児だったあなたに手を上げてしまったの。」



早紀さんの目にはうっすらと涙が滲んでいた。
けれども、東京の日詠先生に止められても、彼女はナオフミさんへの語りかけをやめようとはしなかった。




「尚史を産む前は母親も循環器内科医師も・・・どちらにも自分ならなれると思ってた。母親業がこんなにも大変だなんて知らなかったから。」


ナオフミさんは目の前に置いた味噌汁をじっと見つめながら彼女の言葉に耳を傾けていたようだった。


「でも私はどちらも諦めてしまった。母親も循環器内科医師も・・・どちらも失格。」


外来診察でお会いする白衣姿の早紀さん、いや早紀先生はユリの花のような気高い雰囲気が漂っているのに・・・



「そのせいで、高梨さんご夫婦そしてなによりもあなたに迷惑をかけてしまったの。子育てを放棄してしまって・・・今更だけど、ごめんなさい。私にはそれしかあなたに声をかけてあげられない。」


今、こうやって食卓を囲んだ状態にいる早紀先生はそんな雰囲気のかけらも感じることができないぐらい



「きっともっと早くこうやってあなたに自分の本当の声を聴かせてあげるべきだったわ。」



母親の顔をしていた。
過去の真実を口にしてもなお。

でもナオフミさんは早紀さん本人からその真実を聞いてどう思ったんだろう?





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