ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来



「俺の後輩じゃなくて、正確に言うと日詠の後輩だね。」


日詠の後輩・・・


“オマエじゃなきゃ、ダメだ”

“アイツを救い出せるのは、日詠、オマエだけだ”


入江さんのその一言によって
今朝、ホテルでの入江さんのすがるような声でお兄ちゃんに訴えかけた言葉が
私のアタマをフッと過ぎった。


お兄ちゃんと美咲さん、過去に何かあったの?
それとも今、現在も何かあるの?

スクイダセルノハ・・・オマエダケ

それは、先輩ー後輩の関係だからなの?
それとも、先輩ー後輩の関係だけだからじゃないからなの?

・・・どうなの?


さっきまでは
入江さんに新しい彼女ができたなんて勘違いして
自分のことのように嬉しく思ったりしていたのに

美咲さんという人の情報が入江さんの口から発せられたのを耳にした私は

自分ではどうしようもできない胸騒ぎに襲われてしまった。



カチッ、カチッ、カチッ・・・


突然、聴こえてきた方向指示器の音。
車は減速しながら、走行車線から脱線しパーキングエリアに入って行った。

そして、エリア内の左端にあるハンバーガーショップの店の真ん前の駐車エリアで停車した。


「ちょっとコーヒーでも飲むのはどうかな?なーんか、カラダがカフェインを要求しててさ・・・伶菜さんもど」


そう言いながら私のほうを振り返った入江さん。
その瞬間、彼のキレイな瞳は大きく見開き、暫く私をじっと見つめていた。
そして彼は、一瞬だけ目を閉じ、すぐに目を開いてニッコリと優しい笑みを浮かべ頷いた。


「大丈夫だよ。」


息が詰まりそう・・・
だって私が今、一番欲しかった言葉だったから



「ゴメンね・・・伶菜さんに余計な心配かけるような真似をしちゃって」


私は、お兄ちゃんと美咲さんの関係を疑うような発言なんて、一切口にはしてないのに


「でも、、美咲という人はさ、”曲がったコトはダイキライ” という言葉をそのまま絵に描いたような人間でさ、とにかくマジメで、昔から立派な医者になることしか考えていないから・・恋愛とかには全然興味なさそうだしね・・・」


入江さんは
私の余計な心配を振り払わせてくれるきっかけを


「それに、アイツも、日詠もさ、簡単にはブレないから・・・」


入江さんは
私をスーッとラクにしてくれる言葉を


「だから、大丈夫・・・だよ。」


そして
私が前向きになれるような勇気を
入江さんは与えてくれた


だからこの時は、これからのお兄ちゃん・・・ナオフミさんとの新しい生活に
不安を持つようなことなんてなかったんだ


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