ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
私が・・を強調して言った美咲。
俺は彼女の直接の指導医ではない
指導医は奥野さんで、俺はその補助をしているだけだ
なんでそんなことを言うんだ?
そう思ったその時、
「日詠先生がここにいないと思うと、不安でたまらないんです・・・その患者さんのことじゃなくて、他の患者さんことでも・・・」
『えっ?』
「昨日、日詠先生がしばらく不在になるって聞いて・・・それで・・・いつ帰ってくるかもまだわからない・・・そんな話も聞いて。」
『・・・・・』
俺がいないから不安って
確かに俺の患者を代診してもらうにあたっては不安になってもおかしくはないだろう
でも、それ以外の患者さんもって?
「新婚旅行だろうって・・・それで・・・あたし・・・」
『・・・新婚旅行?』
「行かないで欲しい・・・そう思ってしまいました。」
行かないで欲しい
それは俺の担当妊婦のためなのか?
それでもそれ以外の妊婦のためなのか?
「でも、そんなワケにはいかないですよね?」
俺が行かないで欲しいの真意が美咲の中でどこにあるのかを知ろうとする前に
美咲は自分でその幕引きをしてしまった。
「頑張ります。もうこんなコトが起こらないように。」
しゃがみこんだままだった美咲はそう言いながら自分で立ち上がった。
「戻ります・・・まだ診なきゃいけない患者さん、いるので。」
小さく笑いながら仮眠室のドアを開けた美咲。
とりあえず大丈夫そうだな
そう思ったこの時の俺は
美咲が俺のことを ”ちょっと頼りになる先輩医師” ”いないと難しい症例とか困ってしまう”
と思っているだけ
伶菜のもとに早く帰りたいという想いも頭の片隅にあった俺は
そんなふうに捉えていた。