ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「早すぎる判断なんていいことは何もない。残るのはただ後悔だけだ。」
「でも・・・」
美咲さんと話しているのはお兄ちゃん。
こんな話をしている時に水を差してはいけないと思った私は
祐希とともに廊下の柱の陰に隠れ息を潜める。
「こういう時だからこそ、自分に与えられた仕事をやるべきだ。俺にできることならいくらでも手を貸すから。全て自分だけで片付けようとせずに誰かの手を借りるっていうのも必要なことだ。」
「・・・ハイ。」
優しくそう語るお兄ちゃんの3歩後ろを歩き
柱の陰から一瞬見えた美咲さん。
眼鏡をかけていて凄く知的に見える。
クールビューティーの奥野先生とはちょっと異なる雰囲気。
どっちかっていうとマジメそうな雰囲気。
でも、眼鏡を外したら美人そうな気配を感じた私は
彼女の眼鏡の奥を覗いてみようと彼女の目元に目をやった。
そんな私の目の動きが気になったのか
彼女と私の視線は一瞬ぶつかってしまった。
医局エリアに患者さんが迷い込んだと思ったのか
美咲さんが少し怯えたような目で軽く会釈だけをして、小走りで先を行くお兄ちゃんの後を追って行ってしまった。
彼女と会話を交わしたわけでもないのに
ズーンと胸が重くなるのを感じずにはいられなかった。
同時に
“スクイダセルノハ、オマエダケ”
今朝の入江さんの言葉も
私のアタマを再びフッと過ぎる。
なんでだろう
胸がズーンと重い・・・
今朝、彼が傍に居てくれた間は
シアワセをカラダじゅうで感じていたのに
なんでだろう
美咲さんの前でのお兄ちゃんは
いかにも医師の先輩―後輩のやりとりって感じなのに
なのになんでこんなにも胸が重くて苦しくなるような感覚になっちゃったんだろう?
『・・・・・・・』
そして私はその場で立ち尽くしたまま、
駆け足でお兄ちゃんの後を追いかけて行った美咲さんの姿を見送っていた。
「マー、マーマー!!!!」
なんだかココロだけでなくカラダまでも重苦しく感じ始めた私の耳に突然聞こえてきた祐希の声。
私を探しているようなそんな声。
『あっ、お腹すいた?お弁当を渡して頂くようにお願いして、おやつ食べに行こうか?』
そう言いながら、柱の陰から急いで立ち去ろうと一歩前に出た瞬間。
ドン!!!!!!!
キャッ!!!!