ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来


イ、イタッ! 

鼻の骨が折れそう・・・


「そんなに勢い良く振り返ったりするから・・・」

鼻先で軽く笑うような口調の、聞きなれない男の人の声。
そして目の前は真っ白。


「ボーッとしてたでしょ?」


アタマの上からまたまた聞こえてきた声。
目の前が白いのはどうやら白衣の色のせい。



でも、私の鼻をくすぐったのはダイスキな彼の香りではなく

・・・マリン系のちょっぴりスパイシーな香り。

街中でナンパしてそうな男の人から漂いそうなそんな香り。



「何か考え事でもしてたの?大変そうだね~」



っていうか、なんか馴れ馴れしくないですか?

私、アナタの声、聞いたことないんですけど・・・

っていうか、アナタ、誰ですか?




っていうか

早朝からベッドの中でお兄ちゃんに笑われて
入江さんにもキスの現場を見られたコトを笑われて
その上に
顔すら知らないこの男の人にまで笑われて


『はぁ~・・・』


笑われ続けた一日を思うと私は声だけでなく溜息までもが大きくなり、ガックリと項垂れるしかなかった。


そんなみっともない姿の私に


「そんなに大きな溜息をついてるとシアワセまでどっかに行っちゃうぞ♪」


その男の人は更に追い討ちをかけてくる。



アナタ、誰なんですかなんて
それすら知りたくもないぐらい
本当に不愉快な気分



『もう本当にほっといてく』





ピピピピッ、ピピピピッ



「ちょっと失礼!」


私のほうに向かって手を上げてゴメンのジェスチャーをしながらそう言い、即座に白衣のポケットの中に入れていたらしい携帯電話を取り出してそれを耳に当てたその男の人。


このまま消えてしまおう!



「ハイ、あっ、そうそう。俺、19時ぐらいなら手が空きそうだからそっち行くよん。待っててくれるんでしょ?ああ、うんうん・・・すげえ楽しみ♪・・・キミのテクニックいつもながらサ・イ・コーだしね!」


テクニック、サ・イ・コーって?!


「いやいや・・・うん。じゃ、後からそっち行くから・・・今晩遅くなりそうだけど、待ってて。よろしくなッ♪」


今晩遅くなりそうだけど、待っててって
なんかイヤラシイ






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