ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
「ゴミ、ついてた」
怒り絶頂状態の私に対して後ずさりするどころか
顔色ひとつ変えることなく、サラリとそう言いながら左手を私の目の前に差し出したその人。
目の前にはその彼が口にした通り、衣服の糸らしいゴミが彼の人差し指と親指によって摘まれていた。
「ハイ、コレ。」
そのまま捨ててくれればいいのに、摘んだゴミを私に差し出したその人。
わざわざ、ゴミ渡す?
何、この人
やっぱりもう関わりたくないです、この人とは!
だから、今度こそ帰るッ!
『わざわざ、ありがとうございました!失礼します!!!!!』
私は差し出されたゴミを奪い取るように指先で受け取り、吐き捨てるようにそう言いながら、その人に背を向けて祐希のベビーカーをグイッと前へ押し出した。
その瞬間・・・
「気をつけて♪じゃあ、また!」
背後から聞こえてきたその声。
軽いどころかかなり緩い声。
じゃあ、ま、またって?!
・・・もう勘弁して下さい!
もし私が病気になったとして、
もし白衣を着たアナタが目の前にいても
・・・絶対這ってでも逃げ出してやるから!!!
その想いを込めて私はその人をもう一度キッと睨みつけ、今度こそベビーカーにおとなしく乗ってくれていた祐希とともに足早にその場を後にした。