ラヴシークレットルーム Ⅱ お医者さんの彼との未来
『俺、そんなに危ない男です?』
「危ないわね。間違いない。泣かされていた女の子多数っていう噂も耳に入ってるわよ・・・だから今、ここで言え! 俺は伶菜ひとすじだって!」
『・・・昨日、脳出血を発症した妊婦さんの様子、診てきます。』
「あ~逃げた!!!! 女はね、ちゃんと言葉にして欲しいんだから!スキだ。愛してるって!!!」
言ったことないな
スキだ とか
愛してる とか
そういう言葉
軽々しく言える言葉ではない
俺はそう思っている
大切なのは
そういう想いを抱いている相手に
それが伝わるような向き合い方をすること
話を聴いてほしいなら耳を傾ける
助けてほしいなら手を差し出す
見守ってほしいならその場で見つめている
抱きしめてほしいなら強く抱きしめる
相手が欲しい想いに丁寧に応えようとすればいい
俺はそうも思っている
だから
『はい、はい。』
福本さんの声高な訴えを二つ返事でこの場を乗り切った。
その後、美咲が昨日代診した脳出血発症妊婦の病室を訪れた。
そこには、脳神経外科の医師と美咲、そして、妊婦とその夫らしき人が、眠っている妊婦・・・井上さんの様子を静かに見守っていた。
『井上さんのご家族ですか?』
「・・・はい。夫です。」
『私、井上さんの産科の主治医をしている日詠と申します。ご挨拶が遅くなりまして大変申し訳ありません。』
「主治医の先生・・ですか・・・。この女医さんが担当じゃなかったんですか?」
初めてお会いする妊娠32週の井上さんのご主人は
明らかに困惑した表情をされている。
無理もない
井上さんは28才
高齢出産と言われている年齢には至っていない
『私が井上さんの主治医です。昨日、私用で病院を不在としておりました。そのため、こちらの美咲医師に代診を依頼しておりました。』
「家内からは、主治医の先生の評判を聞いてこの病院を受診することにしたって聞いていたので。とても信頼していました。なのに、なぜこんなことに・・・」
俺と美咲を交互に見渡しながら、声を絞り出すようにそう訴えた井上さんの夫。