強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~

――私が小さな頃から入退院を繰り返していた母は、家にいるよりも病院にいることの方がずっと多かった。

けれど、一時退院で家にいるときは、よくお店の入口の掃き掃除をしていて、学校帰りの私を必ず笑顔で迎えてくれた。

そんな当時の記憶をふと思い出して、母のことが恋しくなる――


「行くぞ、明」


すると、車を停めて戻ってきた真夜が私の手をぎゅっと握った。そのままお店の引き戸を引いて中へと入っていく。


「いらっしゃい……って、なんだびっくりした真夜君じゃないか。いつドイツから戻ってきたんだ?」


私たちを迎えてくれたのは、相変わらず大きな父の声だった。

「昨日の夜です。ずっと向こうの食事ばかりで飽きてしまって。保しなの和食が食べたくて来てしまいました」

和食が食べたいならわざわざ保しなまで来なくても私が作ってあげたのに。

でも、いいか。私も久しぶりに保しなの料理が食べたいから。


「あっ、そうだ。今日は明も一緒なんです」

そう言って、私の前に立っていた真夜がすっと横にずれた。そのせいで私の視界はすっきりして、カウンターの中にいる白い割烹着姿の父と目が合う。

会うのはたぶん結婚式のとき以来だと思う。

近くなのでいつでも来られるはずなのに、まったく顔を見せていなかったことに気まずさを覚える。

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