強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
親父からシヅキホテルグループを引き継ぐことに少し気負いすぎていたのかもしれない。

俺の年齢が三十二とグループ全体の社長に就くにはまだまだ若いせいか、重鎮の役員たちから陰でいろいろと言われていることは知っていた。

そのことが悔しくて、見返してやろうと躍起になっていた。

その結果、無理に仕事を詰め込み過ぎて、知らない間に疲労が溜まり倒れた。

正直、情けない……。

これからはしっかりと自分の体調も管理していかないと、また同じことを繰り返してしまうかもしれない。

少し肩の力を抜こう。

俺は、ソファから立ち上がると、リビングの空気を入れ替えるために窓を開けた。すると、金木犀の甘い香りがほんのりと部屋に入ってきて……


『私、この香り好き』


ふと明の言葉を思い出した。

あれは、明が小学生の頃のこと。潔子さんのお見舞いへ一緒に行く途中に通る公園には、金木犀の木が並んでいた。秋の頃にそこを通ると、ほんのとりと甘い香りがいつも漂っていたっけ。


「早く帰ってこいよ、明」


金木犀の甘い香りを吸い込んでいたら、明に会いたくてたまらなくなった。

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