強引な政略結婚が甘い理由~御曹司は年下妻が愛おしすぎて手放せない~
「……そろそろ起きないと」

のんびりと指輪のことを考えている場合じゃない。

今日は平日で仕事がある。早く起きて朝食の支度をしないといけない。

私は、ベッドから起き上がると、素早く着替えをすませてから自分の部屋を出た。

向かいの部屋ではまだ真夜が眠っているはず。起こさないようにゆっくりと廊下を進むと、突き当りにあるリビングダイニングへと向かう。

広さ二十四畳の広々とした空間には、たっぷりと光が差し込む大きな窓ガラスがあり、隣接する公園を一望することができる。

その公園には、子供たちが遊べる遊具広場や芝生広場をはじめ噴水池やドッグランなどもあり、園内にはたくさんの木や花が植えられている。

そんな緑豊かな公園のすぐそばにある地上四階建ての高級低層マンション。その最上階の4LDKの部屋が私と真夜の新居だ。

周辺にはレストランやカフェが多く立ち並び、その他にもパン屋に花屋、手作りの小物屋にレトロな写真館などがある。そこから少し歩くと、大きな商店街や地域のコミュニティーセンター、図書館などが立ち並ぶエリアへと続いている。

ここに越してきて一ヶ月。

私はこの街の、のんびりとした穏やかな雰囲気がとても気に入っている。

このマンションは、真夜が以前住んでいた都内一等地にそびえ立つ超高級タワーマンションの部屋を売って、私との新居にと新しく購入してくれたらしい。

わざわざアメリカまで買いに行ってくれた結婚指輪もそうだけど、親に決められた結婚相手のはずの私のためにそこまでしてくれなくてもよかったのに……。と、申し訳ない気持ちになってしまう。

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