【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~
「でも、エドガーの発明があれば新鮮なまま食材を保管できて、食中毒になる心配なし! 料理ももっと時短できる! エドガーさまさまですよ」

「う、うん、ありがとう」

「一家に一台、エドガーがいると便利!」

「それ、褒めてる? でも、とりあえず、は、離れて。この体勢は男として情けないっていうか……なんかちょっと違う気がするから」


 力説する私をやんわりと押し退けたエドガーは、ふうっと息をつく。それから口元を手の甲で押さえて、長い間のあとにぷっと小さく吹き出した。

 エドガーが笑った!

 初めて見たかもしれない。物珍しくてじっと目に焼きつけていると、エドガーは穏やかな表情のまま、私に視線を向ける。


「雪のほうこそ、人を動かす天才。雪にそう言われると、なんでもできそうな気がしてくる」

「じゃあ、さっそくお願い! さっき、ロキと話してたんだけど、コンロを作ってもらえないかなーって」

「それ、どんなカラクリ?」


 コンロは聞きなれない言葉だったのか、エドガーは首を傾げる。


「えっと、どんなって聞かれると難しいな。ガスの元栓を捻って、スイッチひとつで火がつくの。しかも、弱火、中火、強火って火加減を調節できるレバーがついてて……」

「ガス?」

「あー、ガスがどういうものなのか、私も詳しくは知らないんだけど、透明な気体で火がつくんだ」

「燃える気体か……。石炭を蒸し焼きにして、炭素部分だけを残した気体燃料なら作ったことがある。そうか、あれはガスっていうのか。それを貯蔵しておくボンベかなにかを作る必要があるな」


 いつもはどもっているくせに、どうしたことだろう。顎をさすりながら、流暢に言葉を並べているエドガーは、どこか楽しそうだ。


「ふっ、ふふ……ああ、すごく面白そうだ」


 エドガーは不気味な笑みを浮かべながら、爛々と瞳を輝かせている。正直、かなり怖い。発明のことを語るときの彼は、まるで何者かに憑りつかれたかのようだ。無気力で引きこもりのエドガーは、どこへいったのやら。


「雪、そのコンロの絵を描いてほしい」

「りょ、了解」


 渡された紙に羽ペンを走らせていると、私の手元を覗き込んでいた彼がぽつりと尋ねてくる。


「雪は将来、料理人になるの?」

「……うーん、ちょっと違うかな。私、本当はランチワゴンを開くのが夢だったの。そこで、お弁当屋をやろうって、約束してて」


 ふと、お葬式の光景が脳裏をよぎって手が止まる。そんな私を不思議に思ったのか、エドガーが気遣うような視線を向けてくるのがわかった。


「お母さんと約束してたの。一緒にランチワゴンでお弁当屋さんをやろうって。でも、お母さん、事故に遭って死んじゃって……」


 言葉が詰まった。おかしいな、これまで全然平気だったのに。滞在先が決まって、気が緩んだせいかもしれない。


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