夢の中の世界
恵一が思いついたようにそう言ってベランダ側の窓へと向かう。


近くの椅子を持ち上げると、窓へ向けて力一杯振り下ろした。


ガツンッ!


鼓膜がビリビリと振動し、恵里果があたしの手をきつく握りしめて来た。


あたしも恵里果の手を握り返す。


しかし、結果は同じだった。


こちらの窓もビクともしないのだ。


振り向いた恵一は青ざめ、頬に一筋の汗が流れた。
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