夢の中の世界
全員、呼吸も忘れたような重たい沈黙が流れた。


誰かがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえ、その音で貴央が我に返った。


真弥から離れ、ドアへと近づいて行くと足で思いっきり蹴ったのだ。


ガンガンと何度も繰り返しドアを蹴る度に、ドアはガタガタと揺れた。


しかし、多少汚れが付く程度で壊れることはなかった。


「貴央、もうやめて。怖いよ」


真弥の弱弱しい声を聞いて、貴央はようやくドアを蹴ることをやめた。


「どうなってんだ……」


貴央が肩で呼吸をしながら呟く。


「とにかく外に連絡を取ってみようよ。きっと、誰か来てくれるはずだから」


真弥が早口に言い、スカートのポケットに手を入れた。
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