手招きする闇
8 帰り道 静かな住宅街
       
 並んで歩く理子、哲司、俊樹の三人。

哲司「なあ理子、お前好きな奴いねーの?」
理子「唐突に何よ。居ないわよ」
哲司「もし誰かに告白されたらどうする?」
理子「さあ。その時になってみないとわかんない」
哲司「俺、お前の事好きな奴、二人知ってるんだ」
       
 思わず哲司の方を見てしまう俊樹。
 哲司と目が合い慌てて逸らす。

理子「えっマジ? ねえ、誰なの?」
哲司「言えない」
理子「えーそこまで言って内緒だなんてズルいよ」
俊樹「いいじゃん。良かったな、お前みたいな男っぽい女を好きっていう男が居て」
理子「ちょっと俊樹、男っぽいは余計でしょ。ったく、傷つくわ」
哲司「俊樹はいいよな。いろんな女から告られて、モテまくりだもんな」
理子「そうよ。それなのに誰とも付き合ってないなんて、不自然。あっ、もしかして俊樹って、ゲイ?」
俊樹「なわけねーだろ! お前の言葉の方がよっぽど傷つく」
哲司「それじゃ俺、こっちだから」
       
 哲司、右に曲がって歩き出す。
  
理子「バイバイ。また明日ね」
       
 振り返って手を挙げる哲司。
  
俊樹「お疲れ」
哲司「頑張れよ。じゃあな」
        
 哲司、前を向いて歩き出す。
  
理子「頑張れって、どういう意味?」
俊樹「さあ」
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