美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
偶然にしては出来すぎている。

もちろんわが社に内通者がいる可能性はゼロではない。

瑠花は頭の中で、狭間部長と但馬課長のニヤついた顔が浮かんできたがすぐ様首を振った。

いくらあの二人が腹黒とはいえ、社全体の利益を下げるようなことをするとは思いたくない。

しかもその当事者がわざわざ瑠花に自分で仕掛けた罠をリークしてくるものだろうか?

瑠花は白シャツにジーンズを身に付け、簡単なメイクをすると、急いで穂積ソワンデシュブの研究開発室のある支社ビルへ向かった。

日曜なので出勤している者はほぼいない。

大手ライバル会社の新商品が、わが社の新商品と被っていたとしても、それが問題とされるのは明日以降で、日曜日にわざわざ出勤してくる上役はいないだろう。

ただし、研究開発をするこの部署の人間だけはだけは例外だ。

数人の研究者は納期が近づくとこの研究室に寝泊まりすることもある。

そのためにビジネスホテル並みの部屋も完備されているのだ。

瑠花は女性社員用の宿泊部屋に荷物を置くと、慣れた手つきで荷物を並べた。

この研究室に、現在女性は瑠花しかいない。

必然的に、この部屋は瑠花のもののようになっていた。

だからと言って瑠花はその部屋を私物化したりはしない。

いつ誰が来ても使えるようにと、宿泊申請していないときはきちんと私物は持ち帰るほどの真面目さだ。

もっとも、主に自分の研究室のソファで寝ることも多いのでこの部屋にはシャワーを浴びに来る程度なのだが・・・。

瑠花は白衣を羽織ると、髪を束ねて戦闘体制に入った。

上層部がどんな決定をするかわからない。

他社の新商品と敢えて被せて競わせるのか?

それとも新しい何かを考えろ言い出すのか?

いずれにしろ、瑠花は社の利益となるために働くだけだ。

瑠花は後者の可能性も考え、早速、別のアプローチから新商品の開発はできないかと、以前よりあたためていた別のアイデアを引っ張り出して研究を開始した。

幸い十分に睡眠は得た。

瑠花は不幸中の幸いとばかりに仕事に没頭した。
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