美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「三神主任・・・やっぱり来ていたのですね」
19時を過ぎ、ようやく作業が佳境に入り始めた頃、瑠花は音もなく室内に立っていた但馬課長を見て驚いた。
「た、但馬課長・・・先程はメールでご連絡頂いて、ありがとうございました」
瑠花は調合の手を止めて、但馬に向き合うと、軽くお辞儀をした。
「なぜロイヤルシャボンの新商品がうちの新開発商品と被ったのかはわかりませんが、ゆゆしき事態です」
但馬はスマホを片手に、先程瑠花が見たホームページをスクロールして見せる。
「でもね、この商品のこのホームページはまだ一般には公開していないんですよ。私がある筋から内々に手に入れたものです」
そんなことをしたら、万が一その事がばれた場合、まるでわが社がスパイ活動をしていたかのように受け取られるではないか。
瑠花は驚きで思わず持っているフラスコを落としそうになったが何とか踏みとどまった。
「私は三神主任のために他社の情報を得てきてあげたのですよ?我々は共犯者ということですよねぇ?」
ジリジリと近寄ってくるこの爬虫類男の言っている意味が全くわからない。
゛頼んでもいないのに、話をややこしくしているのは自分ではないか゛
瑠花は大声で反論したくなったが、日曜の21時に社内にいるのは自分か守衛くらいだ。
叫んでも助けは望めないのなら、できるだけ穏便に解決して退室願うしかない。
瑠花は研究室の鍵をかけなかった自分を心底恨んだ。
「そんなにオドオドした顔で睨んでもちっとも怖くありませんよ。いやだなあ、僕はあなたの味方なのに」
獲物を仕留める前のような但馬の爬虫類に似た目が気持ち悪い。
「あなたがいけないんですよ、その目で穂積部長をたぶらかそうとするから」
゛その目で゛というのは心外だが、但馬の目的はわかった。
おそらく、心晴と朔也の仲を瑠花が邪魔をするのでは、と勝手な疑念に捕らわれた狭間部長が、瑠花を脅すように但馬に指示したのだろう。
「で、そんな他社の新商品情報を私にリークした真の目的は何ですか?」
状況を把握?した瑠花が淡々と但馬に尋ねると、
「今回言い渡された穂積部長と心晴さんとの共同事業からすぐに撤退しなさい。君の本分は開発までですよね?身の程を知ることです」
゛やはりそこが目的か゛
但馬の真意がわかった瑠花は、ため息をついて
「いいですよ。そもそも私は商品開発に関わることができれば文句はないですし、最初からボトルのデザインにも広報活動にも関心はありませんから」
と、答えた。
全ては嘘だったけれど、゛これ以上を望む贅沢は敵゛だと、灰かぶり姫の自分は充分自覚している。
19時を過ぎ、ようやく作業が佳境に入り始めた頃、瑠花は音もなく室内に立っていた但馬課長を見て驚いた。
「た、但馬課長・・・先程はメールでご連絡頂いて、ありがとうございました」
瑠花は調合の手を止めて、但馬に向き合うと、軽くお辞儀をした。
「なぜロイヤルシャボンの新商品がうちの新開発商品と被ったのかはわかりませんが、ゆゆしき事態です」
但馬はスマホを片手に、先程瑠花が見たホームページをスクロールして見せる。
「でもね、この商品のこのホームページはまだ一般には公開していないんですよ。私がある筋から内々に手に入れたものです」
そんなことをしたら、万が一その事がばれた場合、まるでわが社がスパイ活動をしていたかのように受け取られるではないか。
瑠花は驚きで思わず持っているフラスコを落としそうになったが何とか踏みとどまった。
「私は三神主任のために他社の情報を得てきてあげたのですよ?我々は共犯者ということですよねぇ?」
ジリジリと近寄ってくるこの爬虫類男の言っている意味が全くわからない。
゛頼んでもいないのに、話をややこしくしているのは自分ではないか゛
瑠花は大声で反論したくなったが、日曜の21時に社内にいるのは自分か守衛くらいだ。
叫んでも助けは望めないのなら、できるだけ穏便に解決して退室願うしかない。
瑠花は研究室の鍵をかけなかった自分を心底恨んだ。
「そんなにオドオドした顔で睨んでもちっとも怖くありませんよ。いやだなあ、僕はあなたの味方なのに」
獲物を仕留める前のような但馬の爬虫類に似た目が気持ち悪い。
「あなたがいけないんですよ、その目で穂積部長をたぶらかそうとするから」
゛その目で゛というのは心外だが、但馬の目的はわかった。
おそらく、心晴と朔也の仲を瑠花が邪魔をするのでは、と勝手な疑念に捕らわれた狭間部長が、瑠花を脅すように但馬に指示したのだろう。
「で、そんな他社の新商品情報を私にリークした真の目的は何ですか?」
状況を把握?した瑠花が淡々と但馬に尋ねると、
「今回言い渡された穂積部長と心晴さんとの共同事業からすぐに撤退しなさい。君の本分は開発までですよね?身の程を知ることです」
゛やはりそこが目的か゛
但馬の真意がわかった瑠花は、ため息をついて
「いいですよ。そもそも私は商品開発に関わることができれば文句はないですし、最初からボトルのデザインにも広報活動にも関心はありませんから」
と、答えた。
全ては嘘だったけれど、゛これ以上を望む贅沢は敵゛だと、灰かぶり姫の自分は充分自覚している。