美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
仮にも親戚である叔父・直人の身辺については朔也も一通りは知っている。

もちろん副社長夫人となった浅子についても調べはついていた。

*******

狭間家の長女である浅子と末っ子の狭間心晴は異母姉妹だ。

浅子の母が亡くなったのは今から32年前。

お見合いで知り合ったという狭間部長と浅子の母は表面的には仲が良かったが、事実上は仮面夫婦だった。

3人の子供をもうけたが、いずれも女の子。

跡取りを生めないことをネタに、嫌みな姑にいびられ続け、夫にもないがしろにされた浅子の母は、早い段階から病に伏せ一人ぼっちで天国へ旅立った。

それなのに、彼女の初盆を迎える時も待たずに狭間は後妻を本宅に招き入れた。

それが心晴の母、小町である。

小町は若くて優しい女性だったが、小料理屋を営むただの一庶民。

狭間は、浅子の母が病に伏せている間から小町と関係を持ち『いずれは後妻にするからと』囁き関係を続けていた。

当時小学生だった浅子が、父の不貞に気付き、反抗心を燃やしたとしてもおかしくはない現状であった。

と、まあ、小説でよくあるベタな話である。

本当にベタな・・・。

****

「浅子姉さん・・・」

ぶたれた頬を擦りながら、心晴が涙を浮かべて浅子を見る。

「あの女と同じ顔で私を見ないで。父ならず直人さんまで私から奪おうというの?なんて浅ましい子!!」

ヒステリックに叫ぶ浅子こそ、読んで字のごとく゛浅ましい子・・・。

今にも心晴の髪に掴みかからんかのような勢いだ。

「やめなさい、心晴。私にとっては浅子も小春も大切な娘だ。仲違いはして欲しくない」

「そうだよ、浅子。僕が愛しているのは浅子一人だ」

「直人さん・・・」

゛何の茶番だ゛

と朔也は思った。

< 147 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop