美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「次に藤川係長の件ですが、確かに長野の工場に納品予定の原料は、藤川係長のパソコンから゛削除゛の入力がされていました」

「やはりな。あのセクハラ男がやりそうなことだ」

副社長の直人がようやくひきつった顔に笑顔を浮かべて満足そうに頷いた。

しかもまた大福に手を伸ばそうとしている・・・。

゛食い意地のはったエロ豚野郎゛

もはや、狸からも格下げになった直人に朔也がかける情けは残っていなかった。

「藤川は、ああ見えてものすごく警戒心の強い男なんですよ。そうですね・・・誰かが自分のパソコンを不正利用した場合に内密にアラート機能を付加するくらいには」

そう、あまり知られていないが、藤川は学生時代、心配性が過ぎてパソコンのセキュリティソフトを開発してしまうくらいにはガチの゛セキュリティマニア゛だった。

他人の事には全く興味はないが、自分と身内に関することにはことさら警戒心を張り巡らせる。

そんな男の懐に潜り込んだ心晴のことを、藤川が大切にしないわけはないし、あらゆる方面から万全のセキュリティを確立することに疑問はない。

しかも、彼は誰にも知られずにそれをやってのける。

だからこそ朔也は彼を信用し、時には影武者として、心晴や雅樹と共に重用してきたのだ。

そんなことも知らない狭間と愉快な面々は、朔也の策略にまんまと引っ掛かってくれた。

゛ボンヤリ藤川゛の見せかけの姿に油断をした犯人は、一番使ってはならないカードを使用してしまったのだ。


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