美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
ここは、研究所近くのイタリアンカフェ。

無理やり仕事を中断させられた瑠花は、橋沼課長に呼び出され、ナンダカンダと理由をつけられてまんまとここまで連れてこられたのだ。

「好きなものを頼め。反論は許さん」

重ねて、同席することになった穂積部長のまさかの俺様、命令口調に、瑠花は呆れるしかなかった。

「何だ、字が読めないのか?それなら俺が読んでやろう」

メニューはイタリア語で書いてあるわけではなく、ご丁寧に日本語だ。

「・・・くっ!読めますよ」

瑠花は馬鹿にされた悔しさを隠しもしないで

「ナポリタンスパゲッティ」

と敢えてイタリアンから最も程遠い、日本風パスタを注文した。

「あはは!瑠花ちゃん、面白い!さすが俺の期待を裏切らない」

「馴れ馴れしく名前を呼ぶな」

突然、爆笑を始めた橋沼のことも、瑠花の名前呼びを注意する穂積のことも、 瑠花は全く理解できない。

「素直じゃない俺様上司は、パワハラで訴えられるぞ」

「こんなことで訴えませんよ!」

「ほら、三神は気にしてないそうだ」

「それも違います!」

全く噛み合わないマイペースなランチタイムの会話に、瑠花は目眩がしそうになった。

「食え。そして馬力をつけて働け」

゛そりゃ、私なんてアラサーの枯れ女かもしれないけどさ、馬はないでしょ、馬は゛

瑠花ばかりが気まずい雰囲気を醸し出す中、目の前にパスタが運ばれてきた。

゛えっ?穂積部長はペペロンチーノ(唐辛子)、橋沼課長はカルボナーラ(卵とミルク)とか似合いすぎでしょ゛

それぞれの特徴をあらわしたパスタを見て、フッと瑠花が笑った。

「な、何ですか・・・?」

そんな瑠花をじっと見つめる穂積に、瑠花がたじろく。

「いいから食え」

いくらイケメンでも、どこまでも俺様な部長を瑠花は好きになれそうにないと確信した。

瑠花は、特に好きでも嫌いでもないナポリタンスパゲッティをあっという間に平らげると、

「ごちそう様でした」

とテーブルに自分の分のパスタの料金を置いて、研究室に戻って行った。
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