美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「お客様は本日のモデルに負けないくらい素敵な美髪を維持されていますね。関心いたしました」

店長の言葉に激しく同意しそうになる朔也だったが、コミュニケーション能力に欠ける彼は黙って遠目に見ることしかできないでいた。

「御社の製品が素晴らしいからですよ。私は穂積のヘアケア商品から夢と希望を貰っているんです」

゛夢と希望?゛

゛そんな甘ったるい言葉が出てくるくらいなのだから、この少女は余程の天然か世間知らずなお嬢様なのだろう゛

と、そんなひねくれた捉え方をする朔也は後継者としては終わっていた・・・。

「まあ、こんな可愛らしい熱狂的なファンがいらっしゃるのなら、わが社ももっと頑張っていい商品を作らないといけませんね」

「商品を・・・作る?」

「ええ、わが社だけでなく、ライバル会社も日々素敵な商品をお届けしようと研究を重ねています。お客様の想いを開発者にもお伝えしますね」

聞き飽きた穂積の幹部が語る常套句。

朔也の心には全く響かなかったが、少女には違ったのだろう。

綺麗な目をキラキラと輝かせながら、店長の言葉に聞き入っていた。

「はい。今後ともよろしくお願いします。私も頑張りますから」

゛ヘアケアを頑張ると言うことだろうか?゛

熱心なことだ、と心の中で悪態をつきながらも、朔也は気づいたら、会場を出ようとする美髪の少女を追いかけ駆け出していた。
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