美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「これまで、君の企画を拾い上げてやったのは誰だろうな?新人で右も左もわからない君を、数年かけて主任に押し上げてやったのは・・・」

どや顔で恩を売ってくる但馬。

別に、瑠花はこの二人に気に入られたくて仕事をしてきたわけではない。

ただ単に目立ちたくなかったから利用してきただけだ。

「まあ、良いではないか。私は別に三神くんが私たちを裏切ったとは思っていないよ?」

瑠花を追い詰めようとする但馬をなだめて、狭間は一歩間合いを詰めてくる。

「次の社長は、直人副社長と決まっている。だから朔也部長が次期社長になることはないのだよ。絶対にね・・・。私が言っている意味がわかるだろう?」

狭間は、瑠花が朔也に寝返ったとしても、何の得もないと言いたいのだろう。

誰もが損得感情でしか物事を考えていない、と信じている身勝手な人。

瑠花に広告板として利用されているとは夢にも思っていない愚か者。

瑠花がじっと狭間を見つめていると、

「それにね、朔也くんにはすでに決まった相手がいる。私の可愛い末っ子、心晴という美しい娘だよ。君なんて足元にも及ばないだろう」

狭間の゛末っ子溺愛゛は有名だ。

恋愛には全く興味のない瑠花を牽制するなんて・・・。

そんな時間は無駄だと言いたいが、この二人は聞く耳など持たぬだろう。

狭間は、副社長からの恩恵だけでなく、穂積部長を懐に取り込んで会社を我が物にしようとしているのだと、瑠花は悟った。

正直、穂積部長のことは眼中にもない。

むしろ、あの俺様ツンデレな態度は苦手だと思っている。

゛上司として頼りがいがある゛

と、ついさっき見直したばかりだが、狭間に牽制される程はよく知らないのだ。

「おっしゃっていることの意味がよくわかりませんが、私はこれまで通り、商品の開発にたずさわることができれば本望です」

と、瑠花はため息をついた。

「とにかく身の程をわきまえたまえ。出る杭は打つと何度も言ってきた言葉を忘れずに」

満足のいく言葉を聞けて気が済んだのか、狭間と但馬は、いつものように悪役の定型句を吐いて駐車場へ消えていった。
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