美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「三神主任はどうした?」

「ぶ、部長、お疲れ様です。主任は帰りましたよ。定時きっかりで」

研究室で新商品と向き合っていた数人の男性職員が、突然の朔也の訪問に驚き、慌てて返事をした。

「そうか、約束は守ったんだな」

朔也は顔色も変えずに凍りついた表情で呟いた。

「君達もさっさと帰りなさい。残業なんて無能のすることだ。うちはブラック企業ではない。主任を見習ってこれからは定時で切り上げるように」

「は、はい。申し訳ありません。すぐに帰宅します。もちろん三神主任の指示での残業ではありませんので誤解しないでください」

ここの部署の男性社員は、卒後1~3年目の若い研究員ばかりで、皆揃って゛三神信者゛だ。

゛狭間や但馬の理不尽な攻撃から身を呈して守ってくれる三神主任゛

次々と社員が追い込まれ辞めていく中、残った者は皆、瑠花に何かしら庇ってもらった経験のあるものばかりだ。

昨年10月に行われた、橋沼雅樹の研究開発部への人事異動がなければ、いつまでも不正の事実が隠蔽されていただろう。

陰湿ないじめと搾取。

その事実を知ったとき、朔也と瑠花の個人的な事情を差し置いても、朔也は心から怒りを覚えていた。

私腹を肥やそうとする禿げ狸とその権威を笠に着たオオトカゲ。

朔也は、バタバタと撤収を始める若い社員達を見つめながら、反撃の狼煙をあげる決意を新たにした。
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